作品番号Hob(ホーボーケン番号) 〜 ハイドンの楽曲に秩序をもたらしたホーボーケンの業績
2011-04-06 : ピアノレッスンこんにちは、FUKUON 福田音楽教室
ピアノ講師☆福田りえです。 (*^-^)/
生徒さんから、続々と作品番号についている「文字」についての質問がきていま〜す♪
では今回は「Hob」をいってみましょう!
Hobは誰の楽曲の作品番号を表しているの?
まず「Hob」の読み方ですが、ホブではなくて「ホーボーケン」と読みます。まれに「H」とだけ書いてあることもあります。
もちろんクラシック楽曲の作品番号として使われていますから、Hobは「ホーボーケン番号」と呼ばれています。
Hobはドイツ語「Hoboken-Verzeichnis」の頭文字3文字を表しています。
Hobokenは人名。
Verzeichnisは英語のディレクトリ(directory)の意味で、登録簿やカタログといったニュアンスですね。
ではHob、ホーボーケン番号は誰の楽曲の作品番号として使われているか、というと・・・。
そう、ご存知交響曲の父、そして弦楽四重奏曲の父と呼ばれるフランツ・ヨーゼフ・ハイドンの作品番号として使われているんです。
ハイドンは膨大な数の楽曲を後世に残してくれていますが、自筆の楽譜はあまり残っていません。
またハイドンのいくつかの楽曲には作品番号Op.が付いていますが、付いていないものも多く、それに未完だったり断片だけ、あるいは紛失したものもあり、長い間混乱と議論が絶えませんでした。
そこに颯爽と登場したのが、このHob、すなわちホーボーケン番号だったんですね。
アントニー・ヴァン・ホーボーケンの業績
長年論争の絶えなかったハイドンの作品目録ですが、ある人の功績により、秩序だったすばらしい目録が完成します。
それが『ヨーゼフ・ハイドン主題書誌学的作品目録(Joseph Haydn, Thematisch-bibliographisches Werkverzeichnis)』です。
作ったのはアントニー・ヴァン・ホーボーケン(Anthony van Hoboken)。
そうHob、すなわちホーボーケン番号の名称の元となっているホーボーケンなんです。
ホーボーケンは1887年、オランダのロッテルダムに生まれた音楽学者です。
はじめはデルフトという街で技師として働いていたホーボーケンですが、その後ドイツ・フランクフルトやウィーンに移り音楽を学びます。
そのときピアノや音楽理論の手ほどきを受けたのが、シェンカー理論で知られるハインリヒ・シェンカーです。
ホーボーケンはまた楽譜の熱心なコレクターとしても知られ、J.S.バッハやブラームスの初期の版を数多く集め、その数5,000点以上ともいわれています。
そのコレクションは今ではオーストリア国立図書館に収められるまでになっているそうなんですね。
すごい楽譜マニアですよね。^^
さて、音楽学者としてのホーボーケンはいよいよ、ハイドンの作品目録の研究に入っていきます。
すでにご紹介したように、ハイドンの作品目録はとても混乱した状態にありました。
自筆の譜面がなかったり、作品番号Op.が付いていたりいなかったり、紛失、未完、断片、はたまた疑作や偽作などが混在していて、統一的な整理がとても難しい状況になっていたんです。
そのためモーツァルトの作品目録である「モーツァルト全音楽作品年代別主題目録」のように、作曲、もしくは出版順に作品を整理・統合することは断念せざるを得ませんでした。
そこでホーボーケンが考えたのが、J.S.バッハの「バッハ作品総目録番号」ような、楽曲のジャンルごとの整理方法だったんです。
まずハイドンの楽曲を大きく「器楽」と「声楽」にグループ分けすることから目録作りはスタートしました。
そうやって完成したのが『ヨーゼフ・ハイドン主題書誌学的作品目録』というわけです。
ホーボーケンの分類したヨーゼフ・ハイドン主題書誌学的作品目録
ホーボーケンによる『ヨーゼフ・ハイドン主題書誌学的作品目録』は全3巻にわかれています。
- 第1巻:20のグループの器楽曲
- 第2巻:11のグループの声楽曲、
ハイドン編曲によるスコットランドとウェールズの民謡 - 第3巻:索引、補遺、正誤表
最初の第1巻「器楽曲編」は1957年に発表され、残りが1971年と1978年にそれぞれ発表され完成しました。
意外と最近のことなんですよね。^^
器楽曲編と声楽曲編はさらに細かくジャンル分けされていて、順にローマ数字がついています。
〜ここから引用〜
〜ここまで引用〜
- I 交響曲 (1-108)
- Ia 序曲 (1-16)
- II 4声以上の嬉遊曲(ディヴェルティメント) (1-47)
- III 弦楽四重奏曲 (1-83b)
- IV 3声の嬉遊曲(ディヴェルティメント) (1-11)
- V 弦楽三重奏曲 (1-21)
- VI 様々な二重奏曲 (1-6)
- VII いろいろな楽器の協奏曲
- VIII 行進曲 (1-7)
- IX 舞曲 (1-29)
- X バリトンのための様々な作品 (1-12)
- XI バリトンとヴァイオリンまたはヴィオラ、チェロのための三重奏曲 (1-126)
- XII バリトンを含む二重奏曲 (1-25)
- XIII バリトンのための協奏曲 (1-3)
- XIV ピアノと伴奏のための嬉遊曲(ディヴェルティメント) (1-13)
- XV ピアノとヴァイオリンまたはフルート、チェロのための三重奏曲 (1-40)
- XVa 二台のピアノのための曲
- XVI ピアノソナタ (1-52)
- XVII ピアノ小品 (1-12)
- XVIIa ピアノ連弾曲 (1-2)
- XVIII ピアノ協奏曲 (1-11)
- XIX オルガン時計(Flotenuhr)のための小品 (1-32)
- XX 「十字架上の七つの言葉」への器楽作品
- XX-2 「十字架上の七つの言葉」の合唱版
- XXI オラトリオ (1-3)
- XXII ミサ曲 (1-14)
- XXIII 様々な宗教作品
- XXIV 管弦楽伴奏のカンタータとアリア
- XXV 2声、3声、4声の歌曲
- XXVI ピアノ伴奏の歌曲とカンタータ
- XXVII カノン (宗教カノン 1-10; 世俗カノン 1-47)
- XXVIII オペラ (1-13)
- XXIX ジングシュピール(歌芝居=小オペラ)
- XXX 劇付随音楽
- XXXI スコットランド民謡編曲 (273)、ウェールズ民謡編曲 (60)
ホーボーケン番号 - Wikipedia
楽曲のジャンルごとにローマ数字がIからXXXI(1〜31)までふられているのがわかりますよね。
またジャンル名の後ろについている()の中の数字は、そのジャンルに含まれている曲数です。
たとえば交響曲は第1番から第108番まで、弦楽四重奏曲は第1番から第83番まであることを表しています。
では実際のホーボーケン番号をつけるとどうなるのか見てみましょう。
ハイドンの交響曲の代表曲のひとつ、太鼓連打の愛称で知られる『交響曲第103番』。
交響曲のジャンルはローマ数字の「I」、そして交響曲の第103番ですから、ホーボーケン番号をつけると「Hob.I:103」となります。
また皇帝の名で知られる『弦楽四重奏曲第77番』。
弦楽四重奏は「III」、そして第77番なので、ホーボーケン番号は「Hob.III:77」となります。
ホーボーケンのその後
ホーボーケンは『ヨーゼフ・ハイドン主題書誌学的作品目録』の功績によって、1957年にキール大学から名誉博士号を、1958年にはユトレヒト大学から哲学博士号を授与されています。
また私生活では、1922年に女優のアネマリー・ザイデルと結婚。しかし1932年に離婚されています。
1938年にスイスに移り住み、1983年にチューリッヒで亡くなられました。
※没後50年を経過していませんので、肖像権の関係上ホーボーケン氏の写真等の掲載は控えております。
さて今回の魔法は…
(〃^∇^)ノ~エイ*・゜゜・*:.。..彡☆
ぷすっ・・・・☆
今日は、はずれ魔法でした。
ごめんね。
オマケその1
ハイドン:弦楽四重奏曲第77番 Hob.III:77 第1楽章 Allegro.
オマケその2
ホーボーケンによる『ヨーゼフ・ハイドン主題書誌学的作品目録』は、こちらのサイトで閲覧することができます。
⇒ Joseph Haydn thematisch-bibliographisches Werkverzeichnis:Internet Archive
さぁ みなさん!
今日も楽しいピアノレッスンを♪ ・∀・*)ノ
*:゜・*:.。.*.。.:*・・*:.。*・
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【関連書籍】
ハイドン (作曲家別名曲解説ライブラリー)
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