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サール番号S 〜 フランツ・リストとハンフリー・サールが残した『リストの音楽』とは?

2011-04-09 : ピアノレッスン
フランツ・リストとサール番号S

こんにちは、FUKUON 福田音楽教室
ピアノ講師☆福田りえです。 (*^-^)/


上の画像のイケメン、誰だかわかりますか?
そう、ご存知ピアノの魔術師フランツ・リストですね。

いや〜「水も滴るいい男」とは、まさにこのことです!


そしてそのルックスもさることながら、その高度なピアノの演奏技術に失神する女性が出たり、自身も天才ピアノ少女だったクララ・シューマンが感動のあまり涙したりと、逸話には事欠きません。

まさに人気絶頂のアイドル歌手みたいですね。^^


さて、そんなリストの楽曲には「S」という作品整理番号が付いていますが、今回はそのお話です。



【この記事の目次】

  1. フランツ・リストとサール番号「S」
  2. ハンフリー・サールが残した『リストの音楽』
  3. リストの作品カタログとグローヴ音楽事典
  4. サール番号の特徴とリストの創作活動
  5. 多彩なリストの作品整理番号
  6. あなたにも転機は訪れる




フランツ・リストとサール番号「S」


フランツ・リストとサール番号

リストの作品についている「S」。
これは「サール番号」といいます。


よく耳にする曲でいうと・・・

パガニーニ大練習曲 第3番「ラ・カンパネラ」はS.141。
愛の夢〜3つの夜想曲〜はS.541。
コンソレーション〜慰め〜はS.172、という具合です。


そしてこのサール番号の「サール」というのは、考案者であるハンフリー・サールの名前からきているんですね。



ハンフリー・サール(Humphrey Searle)


1915年イギリス生まれの作曲家で音楽学者。

ロンドンにある王立音楽大学において作曲家ジョン・アイアランドのもとで割りと古典的な音楽を学んでいました。

しかしウィーンに留学し、オーストリアの作曲家アントン・ヴェーベルンから作曲を学ぶと一転、十二音技法に代表される無調性の現代音楽に傾倒していきます。

また映画音楽や、イギリスBBCの長寿SFテレビドラマ「ドクター・フー」などの音楽も担当し、プロデューサーとしても活躍されました。

1982年5月12日、ロンドンで亡くなられています。



とまあ現代音楽に傾倒するなど、一見リストとはあまり接点がないようなハンフリー・サールですが、音楽学者としてひとつの大きな研究結果を残されているんですね。

それは・・・




ハンフリー・サールが残した『リストの音楽』


ハンフリー・サール『リストの音楽』

1954年、ハンフリー・サールは音楽学者として1冊のリスト研究書を発表しました。


それが『The Music of Liszt(リストの音楽)』です。


The Music of Liszt (Dover Books on Music)
(洋書)


この研究書はロマン派としてのリストというより、革新性や先駆者としての側面にスポットを当てた内容となっているようです。


リンク先の書評を部分的に意訳すると...

偉大なピアニストであるフランツ・リストは、現代音楽の発展において重要な人物だった。

ロマンチックな印象派の範囲の中で実験的な作品をあえてする...

英国の有名な音楽学者によると、この本はリストに関する英語で書かれた最も権威ある書物である。

図書ジャーナル絶賛!この研究書はすべての真にリストを学ぶ者にとって必須である。

と賞賛の嵐です。^^


特に現代音楽の発展において重要な人物という部分が、無調性の現代音楽を追い求めたハンフリー・サールとの接点になっているような気がします。


無調性音楽のはじまりは、リストの『調性のないバガテル S.216』だといわれることもあるくらいですから。




リストの作品カタログとグローヴ音楽事典


リスト作品カタログとグローヴ音楽事典

さて『The Music of Liszt(リストの音楽)』の内容ですが、次のような構成になっています。


  1. 初期作品(1822〜1839)
  2. ヴィルトゥオーソ(達人)時代(1839〜1847)
  3. ワイマール時代(1848〜1861)
  4. 最晩年
    I.ローマ(1861〜1869)
    II.ローマ、ワイマール、ブダペスト(1869〜1886)

  • 伝記調査
  • 作品カタログ
  • 文献目録
  • 作品のインデックス言及
  • 名称索引


基本的にはリストの生涯を追いながら、その作品の魅力を深く分析していくという流れになっているようですが、注目してほしいのは太字にした「作品カタログ」という部分。


これはリストの全作品を一覧にしたもので、ほかの作曲家の「作品目録」にあたります。


そして同年、この作品カタログを『グローヴ音楽事典 第5版』上でリストの作品表として発表しました。




グローヴ音楽事典とは?


グローヴ音楽事典なんてあまり聞き覚えのないかもしれませんが、

〜ここから引用〜
音楽と音楽家に関する百科事典である。これはドイツ語による「音楽の歴史と現在」とともに、西洋の音楽について扱った最大の参考文献の一つである。

ニューグローヴ世界音楽大事典 | Wikipedia
〜ここまで引用〜


とあるように、音楽史や音楽学を志す人にとっては必須の大事典。


1878年に初版全4巻が出版されて以来第5版まで版を重ね、さらに全20巻の「ニューグローヴ世界音楽大事典」と名を変えて発刊が続けられています。


また英語のオンライン版も、オックスフォード大学出版局の管理のもとで今日も稼働しています。

オックスフォード・ミュージック・オンライン(英語)




その音楽の知の殿堂であるグローヴ音楽事典の第5版に、ハンフリー・サールによるフランツ・リストの作品表が掲載されたことによって、音楽学の世界の中での認知度が広がっていったんですね。


そしてその作品表に付けられていた整理番号こそが、サール番号「S」だったんです。




サール番号の特徴とリストの創作活動


リストの創作活動とサール番号

通常、作曲家の作品目録や整理番号は「作曲順」に並べられる、あるいはそう最大限尽力されることが多いのですが、このサール番号は作曲順にはなっていません。


J.S.バッハのシュミーダー番号BWVハイドンのホーボーケン番号Hobと同じように、音楽のジャンル別の整理になっています。


これはリストがたくさんの作品を残していることはもちろん、紛失、散逸した作品や、未完成、未発表、未発見曲も多いこと、さらに他の作曲家の楽曲の編曲も多数あることも関係しているかもしれません。


そして何より、リスト自身による幾重もの改訂稿の存在が大きな影響を与えていると思われます。


もし単純な作曲順に整理して並べてしまうと同じ楽曲の改訂稿の番号が離れたり、余計な混乱を招く恐れがあるのではないでしょうか。


たとえば

「全ての長短調のための48の練習曲 S.136」は1826年、15歳の作品。
「24の大練習曲 S.137」は1838年、27歳ころの作品です。

そしてこの2作品は、

リスト41歳の1851年の作品、かの有名な「超絶技巧練習曲 S.139」の第1稿と第2稿なんですね。


この3作品を作曲した順に並べてしまうと番号が大きく離れてしまい、お互いの関係性を見失ってしまうかもしれません。


まあ、この辺りは私の想像でしかありませんが、作曲家リストの創作活動の幅広さが、サール番号がジャンル別の整理となったことに影響を与えているんじゃないでしょうか。


音楽学者としてのハンフリー・サールの心配りを感じずにはいられません。^^




なおサール番号はオペラ「ドン・サンシュ、または愛の館 S.1」から、補遺「アンダンテ・マエストーソ S.999」までありますが、「S.708」、「S.708a」、「S.708b」のような記述もありますので、実際は999曲以上あります。


またサール番号が付けられていない紛失、未発見曲もありますので、もっと多くなりますね。


リストのサール番号の一覧はこちらのサイトで閲覧できます。
フランツ・リストの楽曲一覧 (S.1 - S.350)
フランツ・リストの楽曲一覧 (S.351 - S.999)




多彩なリストの作品整理番号


その他のリストの作品整理番号

ここまでサール番号についてお話してきましたが、実はリスト作品の整理番号はほかにもあるんです!



リスト楽曲の少なすぎる作品番号Op.


リスト作品にも一般的な作品番号Op.が付けられている曲があります。

とはいっても、その数はとっても少ないんですけどね。

「12の練習曲 Op.1」から「ランメルモールのルチアの回想 劇的幻想曲 Op.13」の全23曲だけです。

こんなに少なくては実用性が乏しく実際に使われることは稀ですし、すべてサール番号で置き換えることが可能です。


リストの作品番号Op一覧はこちらのサイトで閲覧できます。
フランツ・リストのOp.付き作品 | 五線紙の裏。



ペーター・ラーベによるラーベ番号「R」


ドイツの音楽学者で作曲家、指揮者であり、またリスト博物館の館長でもあるペーター・ラーベ(Peter Raabe)によるリスト作品の整理番号です。

1931年に出版した全2巻の『Franz Liszt(フランツ・リスト)』は、リスト研究のための重要な資料とされています。

そしてその第2巻「リストの創作」はリストの作品目録となっているんですね。(第1巻は「リストの生涯」)


リスト自身による膨大な量の自筆の資料や、これまた膨大な筆写された二次資料を精査して作り上げられたこの作品目録には、整理番号として「R」が付けられています。

またサール番号と同じく作曲年代順ではなく、ジャンル別に分類されているんですよ。

このラーベ番号「R」は、1954年にサール番号が注目されるまで、リスト作品の整理番号として広く使われていました。

現在でもサール番号と併記してこのラーベ番号が書かれていることもよくありますので、覚えておくといいでしょう。


※ラーベ番号によるリスト作品の一覧をオンライン上に見つけることができませんでした。m(_ _)m



「Franz Liszt: Works」によるLW番号


ニューヨーク大学教授で音楽学者のレナ・チャーニン・ミュラー(Rena Charnin Mueller)。

そしてハンガリー出身の音楽学者で、リスト研究によって欧米で数々の賞を受賞しているマリア・エッカート(Maria Eckhardt)。

このお二人が「ニューグローヴ世界音楽大事典」の第2版で発表した、リストの作品目録「Franz Liszt: Works」による整理番号、それがLW番号です。

「Franz Liszt: Works」の頭文字からLW番号と呼ばれている、と思います。^^;

発表は2001年と比較的最近のことですので、これからサール番号のように普及するかどうか楽しみです。



LW番号はこちらのリンク先でその一覧を閲覧することができます。
Franz Liszt: Works(仏語、独語、あるいは伊語が混在)

※ご利用のブラウザによっては翻訳機能で日本語表示できるかもしれません。



その他のリスト作品の整理番号


リストの全集やカタログなど書籍によっては、

  • サール番号「S」⇒「G」,「SW」,「SG」
  • LW番号「LW」⇒「E/M」,「NG2」

という表記の違いがあるようです。

またサール番号をより細分化した「Ferenc Liszt (1811-1886): List of Works = Elenco delle opere(リスト作品目録)」による「SH番号」などもあるそうです。

さらにC番号と呼ばれるものもあるそうなんですが、不勉強故に何を表しているのか私にはわかりません。^^;




あなたにも転機は訪れる


転機

さてサール番号を考案したハンフリー・サールですが、プロフィールでも少しご紹介したように、出会いによって大きく運命が変わりました。


ロンドンでは作曲家ジョン・アイアランドに師事し古典的な西洋音楽を学んでいましたが、ウィーンに留学すると前衛音楽の作曲家であるアントン・ヴェーベルンに教えを請い、音楽性を大きく変えていきます。



そこで今日の音楽の魔法は…

(〃^∇^)ノ~エイ*・゜゜・*:.。..彡☆

誰と出会うかで“運命”が決まる♪


ハンフリー・サールの生涯を見ても、人との出会いによって決定的な影響を受けています。


私自身もいろんな人に出会ったことで、今こうやってブログを書いている姿があるんだと思います。




ここで素敵な言葉をご紹介したいと思います。

〜ここから引用〜
多逢聖因 縁尋機妙
(たほうしょういん えんじんきみょう)

という言葉があります。

「いい人に交わっていると、しらずしらずにいい結果に恵まれる」ということだそうです。

いい人はいい物に通じます。

「いい物に交わっていると、しらずしらずにいい結果に恵まれる」ともいえます。

そして聖因は勝因にもつながる尊い縁です。

皆様とのご縁が深まりますことを念じつつごあいさついたします。

五代庵 主人敬白

五代庵 粗品書きより
〜ここまで引用〜

これは私のピアノ教室の生徒さんから頂いた梅干し菓子に入っていた粗品書きです。


また冒頭の「多逢聖因 縁尋機妙」は、明治生まれの思想家で陽明学者の安岡正篤(やすおか まさひろ)の言葉だそうです。


よい出会いはよい運命につながる。

多逢聖因 縁尋機妙。

素敵な言葉ですよね。^^




またよい出会いは人とだけとは限りません。


映画や本、絵画、美術品などの作品、動物、植物、風景、自然、出来事、物、それに音楽も。


誰と、何と、いつ、どんな形で出会うかによって、大きく運命が変わることがあります。


それは音楽の世界でも、どんな世界でも同じ。


ひとつひとつの出会いが未来を形作っているんですね。



さぁ みなさん!
今日も楽しいピアノレッスンを♪ ・∀・*)ノ
*:゜・*:.。.*.。.:*・・*:.。*・

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【関連CD】

The Complete Liszt Piano Music
- Box set, CD, Import

英国リスト協会会長、リスト研究家でピアニストのレスリー・ハワード(Leslie Howard)による、究極のリスト・ピアノ曲全集CD。
レスリー・ハワード演奏による音源しか残されていないマイナーな楽曲まで網羅した、資料価値も高く評価されているリスト全集です。



【参考Webページ】
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