視覚障害の生徒さんから学んだ自分のピアノの音色をしっかり聴くトレーニング
2015-03-15 : ピアノレッスンこんにちは、FUKUON 福田音楽教室
ピアノ講師☆福田りえです。 (*^-^)/
私のピアノ教室には数名、視覚障害のある生徒さんがいます。
目が不自由だということはピアノを弾く上でハンデが生じるものですが、その反面、本当にいろんな音を聴き分けているんですよね。
音に対してとっても敏感なんです。
その姿を見ているうちに、目が見えている人がピアノを練習する上での大きなヒントにも気がつきましたので、今回はそのことについて書いてみたいと思います。

視力が低下したり失明してしまった作曲家・音楽家というと、スペインのギター奏者で作曲家のフランシスコ・タレガや、同じくスペインのピアニストで作曲家のホアキン・ロドリーゴなどがいます。
タレガは幼いころ用水路に落ちて失明しかけ、ロドリーゴも小さいころに細菌に感染したことで視覚障害を患っていますが、どちらも20世紀の音楽史に確かな功績を残されているんですよね。
さらにもっと昔では、あのJ.S.バッハやヘンデルもそうです。
バッハは若かりしころ月明かりを頼りに暗がりで写譜をしすぎたため視力を弱め、ヘンデルは晩年に、一説によると緑内障で失明したといわれています。
ちなみにバッハとヘンデルは、同じ1685年に生まれ、同じく音楽の才に恵まれ、しかし一度も会うことなく、同じジョン・テイラーという医師から目の手術を受け、同じように手術に失敗しています。
何という奇遇でしょうか。
ほかにも『ピアノのためのソナチネ』でお馴染みのフリードリヒ・クーラウも、子どもの頃に井戸に落ちて片目を失明しています。
現代ではパソコンやデジタル機器、また最新の録音技術など様々な方法がありますが、彼らの生きた時代に視力を失うということは、音楽を作る上で大きな痛手だったことでしょう。
しかし音楽への情熱と絶え間ない努力によってそのハンデを乗り越え、音楽の歴史にとって偉大な足跡を残しています。
彼らにとって最後まで頼りになったのは、音楽の才能もさることながら、やっぱり音、そしてそれを聴き分ける耳だったのは、想像に難くないでしょう。
音楽とは音の連なりでもあるからです。

さて、私のピアノ教室の視覚障害のある生徒さんたちですが、先ほども書いたように本当にさまざまな音を聴き分けています。
特に今まで聴いたことのない音や声に出会うと、「今の何の音!?」とか「誰の声!?」と大きな反応を示すんですよね。
彼らにとって既知の音か未知の音かというのは、安全に生活していく上でとても重要な情報なので、しっかり聴き分け素早く反応するんです。
確かにピアノを弾く上では楽譜や鍵盤が見えないという大きなハンデがあります。
楽譜が見えなければそこに何が書かれているのか自分で確認できませんし、オクターブ離れた鍵盤への指運びなどはとても難しくなります。
しかし音の聴き取りに関しては、よく耳が発達しているためか優れた反応を見せるんですね。
たとえば「右手のメロディーが左のハーモニーで消えそうだよ。」と指摘すると、サッと左右の音量のバランスを変えてピアノを弾くことができます。
打鍵の強弱ではなく、実際にピアノから発せられている音そのものを聴き取っての判断ができるんです。
そんな彼らの反応に接していると、日々のピアノの練習では「見えていると聴こえない」ことがあるのではないか、と思いました。
見えているからこそ、逆に聴こえないことがある。
目でしっかり見ることができるがために、楽譜を見すぎて、楽譜に頼りすぎて、自分の音が聴けていないんじゃないか、と。
楽譜に忠実に弾けているか、楽譜に対して上手く弾けているか、楽譜に対して間違っていないかと、楽譜と自分との世界に入り込みすぎてはいないか?なんて。
たしかに楽譜はとても大切ですし、ピアノを演奏する上では楽譜が基準であり指針になります。
でも本当は、実際どういう音がどんな音色となってピアノから出ているか、の方がもっともっと大切なはずですよね〜。

ピアノを弾く上で楽譜も大切だけど、出ている音はもっと大切。
目に見えている楽譜や鍵盤に意識を向けるのは簡単ですが、目には見えない音や響きなどに意識を向ける、それもピアノを弾きながら、というのは容易なことではありません。
自分が出しているピアノの音を聴き分けるためには、少し意識してトレーニングする必要があるかもしれませんね。
そこで今回のピアノ魔法は…
(〃^∇^)ノ~エイ*・゜゜・*:.。..彡☆
たっぷり練習してしっかり暗譜できたら、次は目をつぶって練習をしてみましょう。
ピアノから出てくる音に意識を向け、室内の響きに耳を傾けると、今まで見えていなかったものが見えてくるようになります。
その上で
などを、実際の音から聴き分けるように訓練していきます。
そうすれば自分が本当は何を弾いているのかわかりますし、自分の体調やそのときの気分、精神状態なども音として表れていることに気がつくようになるかもしれませんよ。
もし暗譜ができていなくても、録画や録音をすれば自分の演奏を聴くことはできますよね。
私のピアノ教室の視覚障害の男の子は、ICレコーダーに自分のピアノレッスンの演奏や、家での練習の最後の演奏を録音していつも持ち歩いています。
それこそお守りか宝物のように大切にして、ピアノコンクールなどの本番前にはしっかりと握りしめて、録音を聴いたり話しかけたりしているんです。
あたかもそこに自分がこれまで経験してきたこと、歩んできた道程、練習してきたこと、学んできたすべてがつまっているみたいに。^^
【関連書籍】
音楽というのは自分と鍵盤と楽譜の間にだけ生まれるのではなくて、ピアノから奏でられた音色がその空間に広がり響くことで大きく成長するもの。
目で見る演奏と耳で聴く演奏の練習をしっかりして、自分のピアノ演奏をどんどんブラッシュアップさせましょう。
では みなさん!
今日も楽しいピアノライフを♪ ・∀・*)ノ
*:゜・*:.。.*.。.:*・・*:.。*・
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ピアノ講師☆福田りえです。 (*^-^)/
私のピアノ教室には数名、視覚障害のある生徒さんがいます。
目が不自由だということはピアノを弾く上でハンデが生じるものですが、その反面、本当にいろんな音を聴き分けているんですよね。
音に対してとっても敏感なんです。
その姿を見ているうちに、目が見えている人がピアノを練習する上での大きなヒントにも気がつきましたので、今回はそのことについて書いてみたいと思います。
目が不自由だった偉大な作曲家・音楽家たち

視力が低下したり失明してしまった作曲家・音楽家というと、スペインのギター奏者で作曲家のフランシスコ・タレガや、同じくスペインのピアニストで作曲家のホアキン・ロドリーゴなどがいます。
タレガは幼いころ用水路に落ちて失明しかけ、ロドリーゴも小さいころに細菌に感染したことで視覚障害を患っていますが、どちらも20世紀の音楽史に確かな功績を残されているんですよね。
さらにもっと昔では、あのJ.S.バッハやヘンデルもそうです。
バッハは若かりしころ月明かりを頼りに暗がりで写譜をしすぎたため視力を弱め、ヘンデルは晩年に、一説によると緑内障で失明したといわれています。
ちなみにバッハとヘンデルは、同じ1685年に生まれ、同じく音楽の才に恵まれ、しかし一度も会うことなく、同じジョン・テイラーという医師から目の手術を受け、同じように手術に失敗しています。
何という奇遇でしょうか。
ほかにも『ピアノのためのソナチネ』でお馴染みのフリードリヒ・クーラウも、子どもの頃に井戸に落ちて片目を失明しています。
現代ではパソコンやデジタル機器、また最新の録音技術など様々な方法がありますが、彼らの生きた時代に視力を失うということは、音楽を作る上で大きな痛手だったことでしょう。
しかし音楽への情熱と絶え間ない努力によってそのハンデを乗り越え、音楽の歴史にとって偉大な足跡を残しています。
彼らにとって最後まで頼りになったのは、音楽の才能もさることながら、やっぱり音、そしてそれを聴き分ける耳だったのは、想像に難くないでしょう。
音楽とは音の連なりでもあるからです。
実際のピアノから出ている音を聴き取って判断する

さて、私のピアノ教室の視覚障害のある生徒さんたちですが、先ほども書いたように本当にさまざまな音を聴き分けています。
特に今まで聴いたことのない音や声に出会うと、「今の何の音!?」とか「誰の声!?」と大きな反応を示すんですよね。
彼らにとって既知の音か未知の音かというのは、安全に生活していく上でとても重要な情報なので、しっかり聴き分け素早く反応するんです。
確かにピアノを弾く上では楽譜や鍵盤が見えないという大きなハンデがあります。
楽譜が見えなければそこに何が書かれているのか自分で確認できませんし、オクターブ離れた鍵盤への指運びなどはとても難しくなります。
しかし音の聴き取りに関しては、よく耳が発達しているためか優れた反応を見せるんですね。
たとえば「右手のメロディーが左のハーモニーで消えそうだよ。」と指摘すると、サッと左右の音量のバランスを変えてピアノを弾くことができます。
打鍵の強弱ではなく、実際にピアノから発せられている音そのものを聴き取っての判断ができるんです。
そんな彼らの反応に接していると、日々のピアノの練習では「見えていると聴こえない」ことがあるのではないか、と思いました。
見えているからこそ、逆に聴こえないことがある。
目でしっかり見ることができるがために、楽譜を見すぎて、楽譜に頼りすぎて、自分の音が聴けていないんじゃないか、と。
楽譜に忠実に弾けているか、楽譜に対して上手く弾けているか、楽譜に対して間違っていないかと、楽譜と自分との世界に入り込みすぎてはいないか?なんて。
たしかに楽譜はとても大切ですし、ピアノを演奏する上では楽譜が基準であり指針になります。
でも本当は、実際どういう音がどんな音色となってピアノから出ているか、の方がもっともっと大切なはずですよね〜。
自分が弾いているピアノの音色を聴くという練習

ピアノを弾く上で楽譜も大切だけど、出ている音はもっと大切。
目に見えている楽譜や鍵盤に意識を向けるのは簡単ですが、目には見えない音や響きなどに意識を向ける、それもピアノを弾きながら、というのは容易なことではありません。
自分が出しているピアノの音を聴き分けるためには、少し意識してトレーニングする必要があるかもしれませんね。
そこで今回のピアノ魔法は…
(〃^∇^)ノ~エイ*・゜゜・*:.。..彡☆
暗譜ができたら目をつぶって練習をしよう♪
たっぷり練習してしっかり暗譜できたら、次は目をつぶって練習をしてみましょう。
ピアノから出てくる音に意識を向け、室内の響きに耳を傾けると、今まで見えていなかったものが見えてくるようになります。
その上で
- 左右の音のバランスはいいか?
- 音と音のつながりはちゃんとできてる?
- 音の強弱はしっかりついてる?
- テンポやリズムは一定に守られている?
などを、実際の音から聴き分けるように訓練していきます。
そうすれば自分が本当は何を弾いているのかわかりますし、自分の体調やそのときの気分、精神状態なども音として表れていることに気がつくようになるかもしれませんよ。
もし暗譜ができていなくても、録画や録音をすれば自分の演奏を聴くことはできますよね。
私のピアノ教室の視覚障害の男の子は、ICレコーダーに自分のピアノレッスンの演奏や、家での練習の最後の演奏を録音していつも持ち歩いています。
それこそお守りか宝物のように大切にして、ピアノコンクールなどの本番前にはしっかりと握りしめて、録音を聴いたり話しかけたりしているんです。
あたかもそこに自分がこれまで経験してきたこと、歩んできた道程、練習してきたこと、学んできたすべてがつまっているみたいに。^^
【関連書籍】
音楽というのは自分と鍵盤と楽譜の間にだけ生まれるのではなくて、ピアノから奏でられた音色がその空間に広がり響くことで大きく成長するもの。
目で見る演奏と耳で聴く演奏の練習をしっかりして、自分のピアノ演奏をどんどんブラッシュアップさせましょう。
では みなさん!
今日も楽しいピアノライフを♪ ・∀・*)ノ
*:゜・*:.。.*.。.:*・・*:.。*・
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