• 【連載開始!】障がいを持つ子どものためのピアノレッスン - ムジカノーヴァ2017年1月号

発達に遅れがあった子が楽譜を理解しピアノを弾けるようになるまでにやったこと

2016-05-09 : ピアノレッスン
発達に遅れがあった子が楽譜を理解しピアノを弾けるようになるまでにやったこと
今回は久しぶりに、障がいのある子のピアノへの取り組みについて書いてみたいと思います。
こんにちは、FUKUON 福田音楽教室
ピアノ講師&音楽療法士の福田りえです。 (*^-^)/


私のピアノ教室にはいろんな障がいを持った子どもたちが多く通ってくれていますが、その中のひとりにUちゃんという、遺伝子に問題を抱えている女の子がいます。


身体のバランスを取るのがなかなか大変で、理解力も同じ歳の子に比べると遅れていましたが、今ではしっかり椅子に座ってピアノを弾き、楽譜も何とか読めるようになっているんですよね。


そうなるまでには長い時間と多くの試みがあったわけなんですが……



ピアノを弾ける芯の入った身体への試み


ピアノをはじめて2年間ほどは、ひとりで歩くのもままならず、両足を40cmほど開いてペコっとお辞儀したUちゃん。バランスを維持できないので、足を閉じて立つことが難しかったんですね。


印象としては身体に芯が入っていない感じです。芯とは体幹のことで、骨盤や背骨、肩甲骨、またそれらを取り巻く筋肉など、体を支えている土台となる部分です。


樹木でいうと幹にあたる部分ですね。木も人も、幹がしっかりしていないと、まっすぐ立ったり、バランスを取るのが難しくなります。


またお辞儀だけでなく筆圧も弱く、お絵かきやぬり絵も安定しませんでした。腕に力を伝達することが上手くできなかったんですね。


これではピアノの鍵盤を叩くこともおぼつきませんから、どうしても体幹に力が必要です。



体幹を鍛える身近なピアノアイテム


とはいっても、体幹を鍛えることは一朝一夕ではできません。トレーニングを伴った療育などで、長い時間をかけて成長を促していく必要があります。


それとは別に、ピアノのレッスンや、自宅での練習時にできることは何かあるか? そういう視点を持って考えていくと、意外と身近なところに体幹を鍛えるアイテムが見つかります。それは……


(〃^∇^)ノ~エイ*・゜゜・*:.。..彡☆
ピアノの椅子!


バランスを補うために椅子にドカッと深く座ってしまうと、体幹が育たないばかりか、椅子に頼って力が抜けてしまい、猫背になったりお腹を圧迫するなど負荷がかかります。


しかし一般的なピアノの椅子への座り方と同じように、椅子の前の方に座るように心がけることで、負荷を少なくしたまま、体幹を鍛えることができます。


持続時間が短くてもいいから、肩を後方へと引っぱるように背筋を伸ばしてピアノに向かいます。また自宅で練習するときも、お母さんに確認してもらうようにしました。


すると(長い時間はかかりましたが)、鍵盤に両手がスッといくようになり、筆圧もハッキリしてきたのです。また発表会でも両足を揃えて、しっかりとしたお辞儀ができるようにもなったのです。




楽譜を理解する力を養うための試み


小さいころから歌が大好きだったUちゃんは、同時にとても良い耳を持っていて、歌がバツグンに上手。音程もきちっと取れていました。


しかし発達の遅れによる理解力の乏しさから、ピアノを習いはじめた当初は楽譜をまったく見なかったのです。


ピアノの音を耳で聴いて、それが意図した音と違ったら、おもむろに隣の鍵盤を押す、というようなことの繰り返しで、音符を読めないまま進んでいきます。



マッチングによる関係性をつかむレッスン


Uちゃんの理解力はなかなか向上せず、読譜できないまま2年半ほど経ったころ、ひとつの試みを実行に移します。


その時点でのUちゃんの中では、

  • ワークブックの中の音符
  • ピアノの鍵盤の音
  • 鍵盤を押す自分の指

この3つがバラバラに存在していて、その関係性を上手くつかむことができていないような状態です。


逆にこの3つが正しくマッチングされれば、大きな突破口になるはず。しかし論理的なやり方では、Uちゃんの理解力がついてこれません。そこで使うのが……


(〃^∇^)ノ~エイ*・゜゜・*:.。..彡☆
色という名の“つなぎ”!


色を“つなぎ”として、この3つをマッチングしていきます。ここでいう色というのは……

  • ど ⇒ あか
  • れ ⇒ きいろ
  • み ⇒ みどり

といった、小さい子のレッスンに一般によく用いられる、ドレミと色の対応のことですね。とても広く普及しているアレです。^^


それと音符の大きなワークブック、それに色シールを用意します。



ワークブック選びがキー


しかし問題は、ワークブックや著者によって、このドレミと色との対応に違いがあるということ。また色と同時に果物や身近なアイテムと併用されていたりすることもあります。


まだ理解力の乏しいUちゃんにとって、このドレミと色、アイテムの対応の多様性は、混乱を招く元となりますす。


そのため、首尾一貫して常に同じドレミと色の関係性を保っている、大きな音符で書かれたワークブックのシリーズが必要でした(果物などとの対応はなしで)。


そしてたどり着いたのがこちら。



この『おんぷのおえかきワークブック』は1から3まであり、また同じ著者の遠藤蓉子先生による……

  • 『小さい子のために ゴーゴーピアノ』シリーズ
  • 『にじいろワークブック』シリーズ
  • 『キッズピアノ』シリーズ

など、一貫したワークブックもありますので、先々のUちゃんの成長を考えても、よい選択だったと思います。



ドレミと色のマッチングは少しずつ


マッチングにあたっては、まず……

  1. ワークブックの音符に
  2. 音符に対応したピアノの鍵盤に
  3. それを弾く自分の指にも

対応した色のシールを、(はじめはサポートを受けながら)Uちゃん本人が貼っていきます。音符が大きいと貼りやすいですよね。^^


こうやってシールを貼るという作業、そして色という視覚情報を通じて、関係性への認知を高めていきます。


しばらくはド・レ・ミの3音だけを、本人が消化できるまで繰り返し、理解できたら次にファ、そしてソと、徐々に音を広げていきます。


もっと慣れてきたら指のシールを剥がすなど、ちょっとずつ難易度を上げていきました。



もちろんこれも体幹のトレーニングと同じく、長い時間(数年とかのレベル)がかかりましたが、そのかいあって今では自分ひとりで楽譜が読めるようになっています。


……といっても、本人はピアノよりも歌うことの方が好きなんですけどね。^^;

ステージ上で歌うUちゃん
▲ステージ上で朗々と歌うUちゃん




まとめ - 回り道もひとつの道


今回はUちゃんへの取り組みをご紹介しましたが、同じ方法が別の子にも効果をあげるとは限りません。それぞれ特徴やこだわり、性格もひとりひとり違いますからね。


また親御さんの心構えやご理解があったからこそ、回り道しながらもじっくり取り組むことができた面もあります。


当たり前のことですが、その時には分からないことって沢山ありますし、人間はまず見えている現象が気になってしまうもの。


ピアノを弾くといつも同じところで間違える。するとその間違えるという見える現象だけにクローズアップし、焦点を当ててしまいがちです。


間違えないようになるまで、100回も200回も練習することも大切ですが、どうしてそこを間違えるのか? その原因を探った方が近道だったりすることもあるんですよね。


Uちゃんの場合は、体幹の鍛錬と色をつかったマッチングですが、一見回り道のように感じても、回り切ってみれば、それがちゃんと道になり、今つながってきているように感じます。


【関連書籍】

CDブック 発達障害のピアニストからの手紙 どうして、まわりとうまくいかないの?

発達障害のある人は何を考え、何に悩み、なぜ人と違う行動をとってしまうのか。脳科学者・中野信子氏が「今まで読んだどの本より『発達障害』の世界がリアルに描かれています。ぜひ、多くの人に読んでいただきたい一冊です」と大絶賛!文章とCDでわかる発達障害。(Amazonより引用)


今回はピアノを学んでいる人というより、指導される先生方や親御さん向けとなりましたが、同じような状況にある方々のお役に立てれば嬉しいです。


では みなさん!
今日も楽しいピアノライフを♪ ・∀・*)ノ
*:゜・*:.。.*.。.:*・・*:.。*・

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